ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場

ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場

ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場

「私たちの社会は、自己陶酔的な表計算屋、パワーポイントのプレゼン屋によってなるほんの一握りの人間の階層に、過大な力を与えすぎてしまったのだろうか?」

イギリス人の元ジャーナリストが、ハーバードビジネススクール(HBS)での日々を綴った本です。エリートの中のエリートが集う学校、最高峰のビジネススクールというイメージのあるHBSですが、著者は冷静にその内部で感じたことを、資本主義、ビジネス偏向の考え方への違和感を含めて書いています。世に数ある「ビジネススクールでこんなこと勉強してすごく成長しましたよ」本とその点が違うところかなと。

HBSを卒業した多くの人が、学費ローン返済のため、高報酬の投資銀行コンサルティング業界に進み、身を粉にして寝る間もないような日々を過ごすことになります。そんな異常な道ばかりではなく、もっと家族や友人と時間を過ごし、豊かな人生を送れる選択肢もあるのではないか、現実と理想のギャップに悩む著者の姿にはとても共感を覚えます。
結局のところ、目先の損得ではなく「自分が生きるべき人生を生きているか」という問いかけに「はい」といえるかどうかではないかと思います。世界は自分以外の他人の都合で既に政治的、経済的、組織的等々に様々に切り分けられているけれども、その中で自分の価値観を形作り、いかに埋没させないような筋道をつけていくか、そういった問いかけへの気づきが本書から得た大きな学びだと思います。

人は自ら提供した労働や支援やサービスの見返りである年金やチップを、喜んで受け取る。だが時間の価値を算出するものはいない。みんな、それを無料であるかのように浪費する。
― セネカ、人生の短さについて